【現役職員に聞く】生育歴の違う大人でつくる おうちづくり

みなさん、こんにちは!田中れいかです。

今回は全国的にも珍しい、現役児童養護施設職員さんが発信するYoutube番組「こたえのない世界へ」チャンネルさんにインタビューさせていただくことになりました!

みなさんと一緒に児童養護施設職員さんのリアルに触れながら、今日も施設で働く職員さんたちの悩みにお答えいただきたいと思います!

「こたえのない世界へ」チャンネルの概要

この番組は児童養護施設専門のチャンネルです。 世の中に児童養護施設の現状を広める活動を行っています。 現役施設職員の「メンター」と「みっちゃん」 さらには心理士の「のりちゃん」も加わり、 面白おかしく児童養護施設についてのトークをお送りしまていす。 児童養護施設を知らないあなたも、知っているあなたも、 ボランティア等で関わりがあるあなたも、実際に働いているあなたも、 ぜひ一度見ていただけたらと思います。
→チャンネルは〈こちら〉

(聞き手 / 田中れいか)

Part ① 家と児童養護施設の違い

ー基本的な内容にはなりますが、両親のもとで暮らすのと児童養護施設で暮らすのと、大きく違うのは一体なんでしょうか?

もっさん:やっぱり生活時間が決まってるっていうのが大きいな違いですかね。

みっちゃん:やっぱり愛情ですかね。親の愛情ってすごいじゃないですか。もちろん僕ら職員でも注いでいるつもりではあるんですけど。

例えば常にわがままを言ったり「かまって、かまって」って言ったりした時に、僕らは「ちょっと待って」という時もあって。親ならすぐにできることをそのままできるかといったらそうじゃないですね。

メンター:僕は小規模児童養護施設で働いていて一番実感してるのが、目の前でご飯を作ってくれる人の存在がすごく大きいということです。

母親が台所に立ってご飯を作ってくれる。あれだけでも帰ってきた時に安心するんじゃないかなって。当たり前に、当たり前の人が帰ってきた時にいる。その安心感は計りしれないなって感じました。

それともう一個、一番大事なのは責任です。

ある程度いろんなことが施設にいると制限されます。それは国から預かって大事な子どもたちなので。

その責任っていうところにおいては、両親であればすぐに決断ができることも、僕らは一歩立ち止まった上で「それは本当に安心安全なのか」「大丈夫なのか」「この子にとって命の危険はないのか」「怪我する恐れはないのか」…そういうことを全てトータルで考えた上での決断をしていくので、決定を出すまでの考察時間がすごくかかる

そこは一般家庭と大きな違いですよね。

ーもう少し簡単に決めているかと思っていました。

みっちゃん:上にお伺いを立てて、さらに上にお伺いを立てて。やっぱり園長先生の判断がないとできないことがあるので。保護者は園長先生、施設長にあたるのですぐに判断ができる。

メンター:子どもたち側からすると「もういいやん、これくらい」「何でなの?」って思っていると思います。でも僕らは「なるべくさせてあげたいんだよ」って思っているので、ものすごく掛け合うんですよ。

でも僕たちは組織の中にいるので、「Aちゃんがこういうことを言っています」「こういう思いで実現させてあげたいんです」というと上司から「じゃぁこれは?」と突っ込まれるのは当たり前なんですよ。

「本当に大丈夫か?」「その子にとってプラスなのか?」といった、いろんな議論をしています。

でも子どもたちには、議論したことは伝わらないまま「ごめん、できんかったね」っていうこともあります。ですが、僕はそういう姿を見せたくないので、できるためにはどうしたらいいのかというのを周りの人に知恵を借りたり仲間に相談したりして進めています。

みっちゃん:このほかの違いでいうと、毎日人が違うことですかね。お母さんとお父さんは毎日同じじゃないですか。

職員もこれだけ配置が増えたということは、昔より多様な職員がいる。常に同じ人ではないので、そこもやっぱり大きな違いですかね。

メンター:担当替えとか、居室替えとか、毎年3月に行われるんですよ。これを一般家庭に置き換えると「君、明日から隣の家に住むんだよ」って。イメージ的にいうと、こういうことが起きています(笑)

ーでも、それが普通って思っていました。

メンター:そうですよね。

なので少しまとめると、一般家庭と児童養護施設の大きな違いは ①親が変わらない ②住む家も変わらない。これだけでも安全基地の面で考えても一番大きな違いですね。

みっちゃん:親は一生懸命見てもいいけど、職員は見すぎてもいけないんですよ。子どもとの適切な距離感があるので。だけど、今あげたのが全部デメリットではなくて、施設だから良いこともたくさんあると思うんですよね。

メンター:いろんな大人と関われるのもそうだし、ある程度子どもは大人の背中を見て社会を見ているので。

みっちゃん:背中、しっかり磨かな(もっさんの背中をさする)。

もっさん:ありがとうございます(笑)

メンター:心理士、栄養士、看護師、指導員、保育士とか。今の児童養護施設は他職種なので、治療的かかわりや養育的かかわりが日々されています。

ただ、例えばですが、合わない職員もいたと思うんですよ。だけど、対親であれば一対一の関係なので基本的には逃げられない。でも施設だと、頼れる先生が他にいると「先生、聞いて〜」って逃げ場があるので、そこは一般家庭よりも施設だからこそのメリットだと思います

Part ② 他人同士で作る おうちづくりのポイント

ーそれでは、今回の本題です!「おうちづくり」をする上で、大切にしていることは何かありますか?

メンター:大きくルールを決めないことかなと思っています。基本的にルールで縛りすぎると子どもたちが苦しくなってしまうので。単位が小さければ小さいほど大事な視点かなと思います。

やはり大舎制だと子どもたちの人数が多い関係で、ルールを作って管理せざるを得ない状況がありました。

よって、一つのおうちを作る時に、ルールを分かった上で仕事に励むことがすごく大事かなと思います。すでにあるルールについて疑問に思った時に「なぜこうなんですか?」「どうしてこれができないんですか?」ということをちゃんと聞いて、納得すること。

そのルールが暗黙の了解でもいいんですけど、ルールがあることをちゃんと自分の中で理解することがものすごく大事かなと僕は思いますね。

みっちゃん:もう大雑把にいうと雰囲気ですかね。

実習生の先生とか一般の企業もそうですけど、職場の雰囲気が大事かなって思いますよね。「家の雰囲気」。それが一番かな。

雰囲気が良ければ、職員も働きやすいだろうし、子どもも過ごしやすいだろうし。ざっくりですみません(笑)

もっさん:自分はこれまでの話を聞いた時に、嘘をつかないことかなって思います。

「これを伝えていいのかな」って迷っているときに一歩踏みとどまって「いや、今はやめておこう」と思って「いや、こうなんだよ」って嘘をついてしまう時ってあると思うんですよ。

でも子どもの目線に立ってそれを受け止めたときに、「どこまで、どういう風に伝えていこう」っていうのを決めた上で、「今日はここまで話したから、今度はここから」というように、真摯に受け答えできるところっていうのが大切かなと感じています。

大人が子どもに「嘘をつかないでね」って言っても、大人が子どもに嘘をついていたら説得力が無いじゃないですか。だから、真摯に受け答えすることが大切かなと思いますね。

のり:そうですね。先ほど出ていた一般家庭と施設の違いに付け加えると、共通してる大事な部分としては、お互いを尊重することだと思います。それは夫婦であっても親子であっても施設職員同士であっても、職員から子どもに対してもなんですけど

それと相手の意見を聞くことも単純ですけど結構難しいので、この2点が大事かなと思います。

心理職だし気になるポイントはいろいろあるんですけど、その施設が大事にしてるものだったり、職員さんが大事にしてるものだったりを尊重したいなと思っています。

それは一般家庭と同じで。親御さんも色んな思いで子どもを育ているので。

それが正しくても間違っていても、そこを受け入れた上で話を聞いていきたいなと思っています。

メンター:子ども達は自分の意志で施設に来るわけではないですし、選べるわけでもないし、担当職員を選べるわけでもない。その上で、子どもたちの人生に携わらせてもらってるので、その覚悟と責任を僕たちがどう返せるかを常に考えています。

ーあんまりいないタイプの職員ですけど、子どもたちに「してやってる」みたいな雰囲気を出す人がいたんです。でもそういう人ほど、すぐ退職して。働き続けている職員さんと根っこの価値観の部分が違うのかなと感じました。

メンター:おそらくその人は「自分がここまでしているから、こうしろよ」という思いが強いと思うんですけど、僕たちの基本的なスタイルは「させてもらっている」なんです。

例えばでいうと、朝 部屋を散らかしていくんですよ。それに対して僕は「今日も元気に散らかしてくれてありがとう!」「喜んで片付けさせていただくんで、どうぞ行ってきてください」という思いが僕にはあります。

信頼してくれてるから、散らかして出かけるんだろうし。

最後の根っこのところは、親でもない兄弟でもないけど、最後この人に相談して頼れる人がいるんだなって、そう思ってもらえる存在であり続けたいなと思っています。

みっちゃん:特段、意識はしたことないですけど、強いて言うなら頼ってもらえると「してあげる」「してあげた」とか関係なく嬉しいです。それだけです。

ただ、頼られる存在で在りたいとは思っています。

のり:自分自身もそうなんですけど、いろんな出会いに救われたなって思っています。

こんな立派ではない大人だけど、子どもから学ばせてもらえることが本当にたくさんあるので、大人の背中を見せられたらいいなというのは、働きながらいつも思っています。

ーあっという間な時間でした。ありがとうございました!次回は最後「試し行動」をテーマにお話を聞いていきます。

(聞き手 / 田中れいか)

「こたえのない世界へ」チャンネルの概要

この番組は児童養護施設専門のチャンネルです。 世の中に児童養護施設の現状を広める活動を行っています。 現役施設職員の「メンター」と「みっちゃん」 さらには心理士の「のりちゃん」も加わり、 面白おかしく児童養護施設についてのトークをお送りしまていす。 児童養護施設を知らないあなたも、知っているあなたも、 ボランティア等で関わりがあるあなたも、実際に働いているあなたも、 ぜひ一度見ていただけたらと思います。
→チャンネルは〈こちら〉

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です