東京都板橋区では令和元年8月より、区と区内にある3つの児童養護施設間において協定を締結し、施設退所者のなかで大学等に進学する子を対象にした、住まい応援プロジェクトを開始しました。
これは、衣食住の土台となる家賃に対して補助を実施する取り組みで、月3万円を上限に、家賃相当額の1/2を助成。助成期間は学校を卒業するまでですが、最長で4年間となっています。
プロジェクト資金はクラウドファンディング型ふるさと納税で寄付を募り、令和元年〜令和2年の実績リーフレットによると、寄付総額12,790,794円。助成実績は2,178,335円となっています。
板橋区として取り組んでいるプロジェクトなので、寄付者側からの信頼はあると思いますが、支援を受けた当事者はこの支援についてどう感じているのでしょうか?
今回は板橋区の住まい応援プロジェクトがケアリーバー応援プロジェクトに変化・拡充することに伴い、支援を受けた方にインタビューをしました。
18歳で施設を出た後の苦労はもちろん、夢に向かって歩き出しているMさんの声は、制度をつくる人や寄付をする人たちにとって貴重な声になるはずです。
※総額の内訳
〈寄付額〉令和元年12月31日時点:6,489,262円(256件)、令和2年1月1日〜12月31日時点:6,301,532円(191件)
〈助成額〉令和元年4月〜令和2年3月:732,335円(3名)、令和2年4月1日〜令和3年3月31日時点:1,446,000円(6名)
引用:児童養護施設卒園者住まい応援プロジェクト実績リーフレット
Mさんのプロフィール
20代、女性。
高校3年生の1年間、東京都板橋区の児童養護施設で育つ。
現在は東京都内の美容室に就職。
(聞き手:板橋区子ども政策課)
東京都等の支援はハードルがあった
―Mさんは何歳から何歳まで施設で暮らしていましたか?
Mさん(以下、M):高校3年生の1年間です。
ー高校卒業後の進路について考え始めたのはいつ頃でしたか?
M:高校2年生の時から美容系の学校に進みたいと考えていました。
ー施設を出たあと、学費や生活費が必要になりますよね。そのお金の準備はどのようにしましたか?
M:高校3年生で施設に入ってから、アルバイトでレジ打ちを始めました。アルバイトは特に大変ではなかったです。
学費については学校の成績を維持して、給付型の奨学金をもらうことができました。
ー住まい応援プロジェクトについて職員から教えてもらったのはいつ頃でしたか?
M:申し込み時期の3月に、施設の職員に教えてもらって初めて知りました。
ーこの制度について聞いた時に感じたことは何でしたか?
M:お金が出るから助かるなと思いました。
ー東京都等の支援もあったと思いますが、区の支援を利用したいと思ったのはなぜですか?
M:東京都等の支援は利用するのにハードルがあったからです。
ー実際に住まい応援プロジェクト(家賃助成)を利用してみて、どんな部分の負担軽減に繋がっていると感じていますか?
M:生活費の負担が減ってよかったです。それと、施設にいた頃と変わらず板橋区に住むことで、環境を変えずに暮らすことができました。板橋区だったら何か会った時に相談ができるので安心して新生活をスタートすることができました。
美容師に限らず、中国へ留学する夢も叶えたい
ー学校に通う中で楽しかったことは何ですか?
M:やっぱり美容について学べたことです。卒業の時にショーがあって、技術者として舞台に立てたことは嬉しい思い出として残っています。
学校が渋谷にあるのですが、新しい友人と一緒に、バイトまでの空き時間に買い物やご飯を食べに行けたのは楽しかったです。
苦労したのは、学校やバイトで大変だったことです。土日も休まずバイトをしていたので、1日休みになる日があまりありませんでした。
ー学校卒業後の進路やこれからやってみたいことを教えてください。
M:卒業後は都心の美容室に就職予定なので、まずは美容師の仕事を頑張りたいです。
そして、お金が溜まったら中国に留学したいなと思っています。というのも、私の母は中国人で中国語が話せます。中国の学校で勉強して、将来的には通訳や日本語の先生をやりたいです。
もうある程度 留学したい学校は決まっていて、日本の大学のような総合的に勉強できるところを検討しています。日本人は留学生という扱いになるので入りやすいみたいで。
支援のおかげで貯金ができた
ーこの制度はクラウドファンディングで応援してくださった方々のお金がみんなの所に届くという仕組みですが、このやり方はどう思いますか?
M:寄付をしてくれた人は優しいなと思います。ありがたいです。
ー住まい応援プロジェクト(家賃助成)に寄付してくれた方へメッセージをお願いします。
M:寄付をしていただいたおかげで、お金を貯めることができました。寄付していただけなかったら、今よりも大変な生活を送ることになっていたと思います。
これからは社会人として頑張りたいです。
ー最後に、住まい応援プロジェクトについて「これも必要!」と思うことがあればぜひ教えてください。
家賃補助は月額の1/2ですが全額補助だといいなと思います。というのも、バイトに思うように入れなかったりして給料が少ない時があって大変だったので。
あとは光熱費が高かったので、これについても補助があるといいなと思います。
年金の取り扱いがよくわからないので、知る機会があるといいなと思います。
(聞き手:板橋区子ども政策課)
令和元年にスタートした住まい応援プロジェクトは「社会的養護経験者(ケアリーバー)応援プロジェクト」と改名し支援内容の拡充を行います。
板橋区で育った子たちが、板橋区の支援を受けて社会人へと歩き出せるよう、みなさまのご理解と応援をよろしくお願いいたします。
→事業内容はこちら〈社会的養護経験者(ケアリーバー)応援プロジェクト〉
→ご寄付はこちら〈東京都板橋区|ふるさとチョイス〉