みなさん、こんにちは!田中れいかです。
今回は全国的にも珍しい、現役児童養護施設職員さんが発信するYoutube番組「こたえのない世界へ」チャンネルさんにインタビューさせていただくことになりました!
みなさんと一緒に児童養護施設で働く職員さんのリアルに触れながら、同じように施設で働く職員さんたちの悩みにお答えいただきたいと思います!
「こたえのない世界へ」チャンネルの概要
この番組は児童養護施設専門のチャンネルです。 世の中に児童養護施設の現状を広める活動を行っています。 現役施設職員の「メンター」と「みっちゃん」 さらには心理士の「のりちゃん」も加わり、 面白おかしく児童養護施設についてのトークをお送りしまていす。 児童養護施設を知らないあなたも、知っているあなたも、 ボランティア等で関わりがあるあなたも、実際に働いているあなたも、 ぜひ一度見ていただけたらと思います。
→チャンネルは〈こちら〉
(聞き手 / 田中れいか)
ー子どもの支援に携わっている人からの質問です。問題行動、荒れている子に対してどのように関わっているのかを教えてほしいです。
メンター:この質問を見た時に昔は思わなかったんですけど、最近すごく思うのは「ありがとうございます」という気持ちになることです。
問題行動や荒れている子に対して、今その場を収めないといけないという感情よりも、変な考え方ですが、今僕に足りないものを子どもたちが僕たちに教えてくれているんだなと思うようになりました。
子どもたちから「この問題を職員に与えてあげるから、越えてきてくださいよ」と言われている気がして。だから今は「はい、(問題を与えてくださり)ありがとうございます」と子どもたちに直接伝えています。
「この問題に対してどう越えていくのか答えを出すので、考えさせてもらうね」みたいな伝え方を子どもたちにしています。
ーこれは心理的にいうと良いアプローチなんですか?
のり:そうですね。児童養護施設ならではかもしれませんが、場を収めようとか、その子をどうにかしようとか、どうにかしてやろうとか。そういう気持ちになるよりかは、冷静になって一旦距離を置くというのは大事なのかなと思います。
ーみっちゃん、いかがですか?
みっちゃん:問題行動にもよると思いますけどね。ただ、共通して言えるとしたら、問題行動とかいう前に「何でそうした?」っていうのを探ります。叱るのではなくて。
そうしないと解決しないと思うので。
メンター:基本的にこういう問題が起きると、担当の職員や関わった職員って「あ〜」って思うんですよ。でも、責めても何も解決しない。
そこをどう解決するかが、僕らのチャンネル名にもなっていますが、答えのない世界のなかで一番おもしろいところなので。
「さぁ、問題きたよ!」「みんなでどう解決する?」って言いながら、まずはその問題を解決して、その後に振り返りや反省をすればいいと僕は思っているので。
みっちゃん:僕の施設では元々、チームアプローチというのを施設全体で掲げて取り組んでいるので、絶対に、担当職員やその日に出勤していた職員の責任ということは100%ないという仕組みの中で支援しています。それが浸透してきているので、基本的には「誰かのせい」という言葉は出てきません。
その前提があった時に報告・連絡・相談がしっかりできていれば、その子にかけられる言葉も増えるし、その子もいろんな大人の言葉によって救われるだろうし、同じことで複数人の大人に怒られるということも減るだろうし。
そういった面でもチームアプローチというのは大事かなと思いますね。
メンター:みっちゃんのように管理職にこれだけ余裕があれば、自分を責める職員も減っていくと思います。僕たちはその問題に関して、いかにして答えを導き出してあげられるか、そのためには「こうしていくんだよ」というのを、職員に教えてあげることが大事かなと思うんです。
ただ、どうしても起こりやすいのが、対応策ばかり考えて答えが出ないという状況。会議だけが長くて何も見つからないこともあるんです。
でも、長く児童養護施設で働いていて、子どもへの対応策を一つずつ培ってきた人たちは、知識や経験からたくさんの答えを持っています。
みっちゃん:これは僕も共感です。対応策をできるだけ多く知っておいたほうがいいですよ。(田中れいかを指差して)無断外泊とかね。
無断外泊するなって言ってもするんですけど、無断外泊をしないようにどうしようかを考えたり、無断外泊をしたらものすごく心配したことを一生懸命伝えたりするのもいいし。
メンター:みっちゃんとこの番組を始めたきっかけについてよく話をするんですけど、一つの施設の中に答えがないことは当然あるし、一人でもがくときもあると思うんですけど、周りを見渡せば全国に仲間ってたくさんいるよねって話をしています。
このSNSが発達した時代にいろんな人の話を聞いて、いろんな人の答えをもらって、自分の中に落とし込む。
「そうか!こういう答えもあるのか!」「こういう進めかたがあるのか!」というところを職員はたくさん知っているので、どんどん繋がっていけたらいいなって思っています。
僕らは誰も否定しないので「あの仕方が悪い、この仕方が悪い」関係なくて、横のネットワークに繋がれるようになったら僕らは嬉しいなと思います。
一人で抱え込まないこと。その思いに関してはすごく伝えたいなと思います。
ー個人的な経験にはなりますが、壁に穴を開けたり無断外泊をしたりした時に、当時は対処療法的で「部屋から出てくるな」「外出禁止」といった対応が目立っていました。子どもながらにもう少し話を聞いてほしいと思っていましたが、対応する職員の話を聞く姿勢は大切だなと感じます。
メンター:今は以前に比べて話を聞くようになったと思います。それは、その問題がなぜ起きたのか、その子は一体どういう気持ちだったのかをしっかり聞くということです。
それは職員が充実してきているのも理由としてあげられます。
ーそれは安心しました。これはお話しようか迷いましたが、ある施設で飛び降りる子が出たそうです。その時にその施設は何をしたと思いますか?
もっさん:柵を付けた(正解)。
メンター:れいかさんの言うことはよく分かります。例えば、壁に穴を開けるにしても暴力を振るうにしても同じだと僕は思うんです。
なぜその行動をしなければならなかったのかとか、その他の対処の仕方が分からないから対処療法的な支援になってしまう。
でも、みなさんも感じているように、飛び降りる子には飛び降りる理由があるんですよね。そこをいかにして聞いてあげられるかが大切だと思います。
この問題行動についてはいろいろと相談を受けるのですが、その事象だけに目を向けたら何も解決しないよとお伝えしています。
それは生まれた時の生育歴とかこれまでの経験にきっかけやヒントがあるかもしれない。他の人のを見たかもしれないなどなど、全てを調べないとダメだよと思っています。
何が彼ら彼女等をそうさせるきっかけや行動があるのかを調べた上で、どう対応していくかという話になります。
でも実際の話、子どもの安心安全を考えたときに、施設で暮らしている子どもたちは国から預かっている大切な子たちなので、柵を付けるというのも一つの策だと思います。
みっちゃん:サク(柵・策)だけに…
もっさん:お上手(笑)
みっちゃん:なんか、言い方かなと思いますね。
「本当にその子の安全を配慮して柵を付けました。その行動をやめさせようではなくて。」という言い方をすれば違うだろうし「柵を付けて終わりました」だと柵を付けても「飛び込みたい」「飛び降りたい」気持ちは変わっていないから何も変わらないとは思いますね。
のり:問題行動って目に見えるので、それを解決したら「あ、よかった」と思ってしまうんですけど、でもそれは氷山の一角で、その下にたくさんの本人の抱えていることや気持ち、引っかかっていることや問題があると思います。
なので、その背景を考えることやその問題が起きるまでの流れを把握するのはもちろん、その子の生育歴から支援や対応策を職員みんなで考えるべきだなといつも思います。
みっちゃん:僕だったらいろんなアプローチをすると思います。例えば、バンジージャンプに一緒に行くとか。
もっさん:楽しそう。
みっちゃん:一個の問題が解決すればいいという問題ではないと思うので、いろんな視点で考えて声かけをしていきます。
例えば、死んだらどうなるのかと言う話を一緒にしてみて、どんな気持ちになるのかを話し合うとか。こういう試しにできることを考えてみるといろいろ出てきますね。
メンター:僕は柵を付けた施設側と職員の思いを聞きたくて、柵を付けるにしても苦労があったと思うんです。だから、柵を付けたという事象だけをみると評価しにくい点もあるんですが「今まで向き合って頑張ってきましたね」と伝えたいです。
できる限り一緒に考えていい答えを見つけたいし、もう僕はその職員さんに出会ったらハグしてあげます。
ーやはり、ハグ(笑)みっちゃんのお話していた代替案としてできることを一緒に考えるというのは子どもにとって嬉しい伴走だなと思いました。
メンター:大事やね。
みっちゃん:また例え話になりますが、もし壁に穴を開けたら、壊していい新しい壁を作ってあげるのも一つですよね。それだけじゃなくて「自分の限界の壁を壊せ!」と伝えるか(笑)
もっさん:新しい。
みっちゃん:殴りたい気持ちを汲み取ってあげたらいいよね。殴ってしまった壁を一緒に塗り直すとか。
メンター:僕の施設では実際に壁に穴を開けた子がいるんですよ。そしたら「弁償します」「謝ります」って言うんです。謝ると言っておきながら、誰に何を謝るのかわかっていないという。
よくあるパターンですけど、そこをどうしていくのかが非常に大事で、本人に考えてもらいました。穴を塞ぐのか、そのままにするのか。
もう職員側は穴を開けた理由を知ってはいたんですが「どうするの?」という話をしましたね。
そしたら、壁にぬいぐるみを挟むという結論になり、いま僕の施設では壁にぬいぐるみが挟まっています(笑)
ーある職員さんは、私が壁に穴を開けたことについて「その壁に田中れいかがやりましたって書いたらいいんじゃない?」と面白い発想をシェアしてくれました。「ずっと施設に残るぞ」みたいな(笑)
メンター:おもしろい、おもしろい。
みっちゃん:でもまずは手、大丈夫だった?
メンター:やさしい〜
もうすでにアイディアはいろいろ出ていますが、答えがひとつではないのが面白い業界なので、これからもみなさんと一緒に考えていけたらと思います!
ーということで、本日はありがとうございました!
(聞き手 / 田中れいか)
「こたえのない世界へ」チャンネルの概要
この番組は児童養護施設専門のチャンネルです。 世の中に児童養護施設の現状を広める活動を行っています。 現役施設職員の「メンター」と「みっちゃん」 さらには心理士の「のりちゃん」も加わり、 面白おかしく児童養護施設についてのトークをお送りしまていす。 児童養護施設を知らないあなたも、知っているあなたも、 ボランティア等で関わりがあるあなたも、実際に働いているあなたも、 ぜひ一度見ていただけたらと思います。
→チャンネルは〈こちら〉