【日本初】ケアリーバー(社会的養護経験者)全国調査が実施されました!

2021年4月末、「ケアリーバー(社会的養護経験者)8割以上が中高卒」「ケアリーバー(社会的養護経験者)の相談者は施設職員」といった見出しの記事が多くみられました。

また社会的養護経験者の悪いところばかり注目されているのかな….

なんて思っていたのですが、しっかり調査結果を見てみると、進学環境における改善や、退所後のアフターケアなど、今までの調査ではみられなかった良い兆しが確認でき、支援の可能性が見えてきました。

今回は中でも退所後の「進路」と「つながり」に注目して、社会的養護を巣立った子達の現状を見ていきたいと思います。

社会的養護を巣立った子たちの対象施設は里親家庭・ファミリーホーム・児童養護施設・自立援助ホーム・児童心理治療施設・児童心理治療施設です

ケアリーバーとは?

そもそもケアリーバーという言葉について初耳の方もいると思うので、どういう意味なのかを共有したいと思います。

ケアリーバー(Careleaver)とは、直訳すると「ケアを離れた人」。

その意味から「社会的養護のケアを離れた人」→「社会的養護の措置を離れた人」→「社会的養護を経験した人」と言い換えられ、「社会的養護経験者」と言われることが多いです。

一方で、ユースという言葉も聞いたことがありませんか?

ユース(Youth)とは、直訳すると「若者」。

若者というと広義ではありますが、社会的養護におけるYouthというのは「社会的養護のもとで暮らしている人やケアを離れて自立した若者たち」と言われています。

社会的養護の子達の支援をしているIFCAさんではYouthのことを次のように表記しています。

YOUTH(社会的養護当事者)

児童養護施設や里親家庭で育つ子どもたちや、ケアを離れて自立した若者たち

IFCA ホームページ

よってケアリーバーは社会的養護経験者ユースは今、社会的養護のもとで暮らしている子+措置を離れた子も両方を示す言葉なんですね。

今回の調査の特徴

ということで、本題に戻ります。

今回、調査をしてくださったのは三菱UFJリサーチ&コンサルティングです。

調査の特徴は次の2つです。

  1. 日本初!社会的養護を巣立った子たちの全国調査であること
  2. 調査の検討において当事者をメンバーに入れたこと

これまで、社会的養護を巣立った子たちの調査というと「東京都内の施設対象」「さいたま市内の施設対象」「京都市内の施設対象」といった各自治体ごとの調査がちらばっている状態でした。

そういった点で今回、日本国内の施設や里親家庭等で生活していた人たちに関する全国調査がされ、集計されたことは非常に意義があることだなと感じています。

また、当事者といっても院卒など高学歴を持つ当事者の参画はこれまであったと思うのですが、そういった背景に関係ない当事者をメンバーに招いたことについては時代が変化してきているのを感じました。

また、この調査では退所者本人が回答する調査と施設職員さんや里親さんが回答する調査も合わせて集計されているので、気になる方はPDF資料をご覧いただけたらと思います。

児童養護施設等への入所措置や里親委託等が解除された者の実態把握に関する全国調査

今回の記事では退所者本人が回答した調査に注目して、「進路」と「つながり」を見ていきます。

退所後の就労・就学状況の変化

まずは社会的養護を巣立った子たちの進路を見ていきます。

退所後、就職をした人は53.5%、進学した人は36.3%、未定だった人は4.6%、その他は4.8%となっています。

その他のなかには次の進路が含まれます。

  • 結婚・出産・育児
  • 就労継続支援B型作業所
  • 障害者支援施設
  • 職業訓練校
  • 生活介護事業所
  • 少年院
  • ニート

最終学歴はというと(現在、通学している人を除く)、中卒者が15.4%、全日制高校卒業者が54.5%、定時制・通信制高校卒業者が9.5%。

専門学校・短期大学卒業者が10.6%、4年制大学卒業者が2.0%となっています。

もともと社会的養護というと、現在のような進学をするための支援制度がなく、中卒者ばかりで高校に進学できない人がたくさんがいたそうです。

そういった背景から支援制度が拡充された歴史があるので、その点でいうと高卒者が増えているのは大きな変化なのかなと個人的に思います。

就職者の雇用形態

つづいて働いている人の雇用形態をみていきます。

働いている人の雇用形態をみてみると正社員が51.8%、非正規雇用が44.4%となっており、正社員として働いている人のほうが多いことがわかります。

この結果はどう受け止めたらいいんだろう…

と思ったので、平成29年2月に公開された東京都の社会的養護を巣立った人たちの調査結果と比較してみたいと思います。

すると、東京都の調査結果では非正規雇用者のほうが若干多くなっていましたが、本調査は正規雇用者が多くなっていることがわかります。

調査人数が違うので単純に比較はできませんが…

この結果だけみると、社会的養護から巣立つ子は非正規雇用が多いという、どちらかというとネガティブな印象を持たれることも多いですが、正規雇用として働く子が非正規雇用者を上回っているのは大きな変化かなと思いました。

進学者の生計の立て方

わたしが今回の調査結果を調べていて驚いたのはこの項目です。

2019年度に退所した子742名の進路のうち、就職をした人は52.2%、進学した人は34.3%。

中でも進学者の内訳について注目してみると、就労しながら通学している人の割合が30.3%に対し就労せずに通学している人の割合は52.4%と、働きながらでないと進学できないと言われていた社会的養護の常識を覆す結果となっています。

ただ、通学だけできている状況として、高校へ通っている子が多いからかな?

とも思いましたが、半数以上が専門学校・短期大学・4年制大学へ通学しているようなので、高等教育に進学し働かずに学業だけに専念している子が少なからずいることがわかります。

てっきり進学者は増えても、バイトしながらの子が多いよな…なんて思っていたのですが、進学だけに専念できる子の方が多いことを知り驚きを隠せませんでした。

この背景には、自立支援担当職員の配置や、給付型奨学金の充実、国が実施している高等教育への支援制度の普及があるのかなと思います。

ただ、進学したあと、なんらかの理由で中退した子もいると思うので、その調査もぜひ入れてほしいと思いました。

退所後の施設等とのつながり

ここからは巣立った施設等とのつながりや連絡頻度、困ったときの相談相手についてみていきます。

後ほど、その連絡頻度においてちょうど良いのか、多いのか、少ないのか、というデータもあるので、施設の職員さんや里親さんはぜひ、日々の関わりの参考にしてみてください!

連絡頻度

まずは直近1年間における巣立った施設等との連絡頻度をみていきます。

もっとも多い割合が2〜3ヶ月に一回(27.2%・811名)、続いて一ヶ月に一回以上(20.7%)半年に一回以上(18.8%)となっています。

少なくとも半年に1回は何かしらのやりとりをしているんですね

ちなみに、週一回以上のやりとりが多いのは、里親家庭とファミリーホームでした。

そのほかの施設(児童養護施設・自立援助ホーム・児童心理治療施設・児童自立支援施設)では、2~3ヶ月に一回以上が一番多くなっています。

この連絡頻度において、巣立った子達はどう思っているのでしょうか?

現在の連絡頻度の充足感をみると、どの施設(形態)で巣立っても65.8%の子が「ちょうどよい」と答えています。

また、連絡頻度がちょうど良いのか、多いのか、少ないのか、というデータ結果はこのようになりました。

2~3ヶ月に一回以上が「ちょうどよい」と思う人が多いことがわかります。

ここで参考データとして、一般的なひとり暮らしをしている大学生が両親とどれくらいの頻度でやりとりしているのかをみていきます。

タイトル
第1位:2~3週間に1回(17.9%)
第2位:1ヶ月に1回(17.2%)
第3位:1週間に1回(16.4%)
第4位:1週間に2~3回(15.7%)
   :毎日(15.7%)

マイナビ学生の窓口調べ 2017年5月(一人暮らしの大学生男女134名)

施設等で育った子と職員さん(里親さん)との関係と、大学生と大学生の親御さんとの関係は単純に比較できるものではありませんが…

一般的なひとり暮らしの学生では一週間に一回もしくはそれ以上の頻度で連絡をとっていると回答している割合が47.8%あります。

一方で、社会的養護では週一回以上の連絡が、里親家庭は27.9%、ファミリーホームは27%となっており、児童養護施設は4.9%となってしまっています。

以上のことから、社会的養護よりは実親家庭の方が連絡の頻度は多く、また社会的養護の中でも見ている子どもの人数が複数人になればなるほど連絡する頻度が低くなっている傾向が窺えます

さらに、寂しい話ですが、社会的養護においては退所してから年が経つほどに連絡頻度が低くなる傾向もあるようです。

このことに関しても、家庭養護と大規模施設では頻度が低くなる角度に差があるのではと仮説が立てられますが、そこまでのデータは公開されていませんでした。

いずれにせよ、以上を踏まえると国が大規模ではなく家庭養護(里親・養子縁組・ファミリーホーム)を推進している理由が連絡頻度の面からも理解できる気がします

困ったときの相談相手

ここからは巣立ったあとの「つながり」に注目していきたいと思います。

まずは困ったとき、誰に相談しているのか、困ったときの相談相手トップ7をみていきます。

  1. 施設の(元)職員:37.1%
  2. 友人:35.2%
  3. 施設等で生活したことのある友人:34.2%
  4. 交際中の人・配偶者(結婚相手):25.1%
  5. 親:20%
  6. きょうだい:18.9%
  7. 職場の人:17.8%

この結果は多くのメディア取り上げられていましたね。

社会的養護の歴史として「施設を出たら終わり!」「職員とやりとりしない!」なんていう状態もありましたが、アフターケアという考え方が普及して、困ったときの相談相手として職員さんがランクインしたのはいい変化なのかな〜と思いました。

相談というとかなり広義ではあるので、どの程度の悩みを相談相手として回答しているのかまではわかりませんが、施設を出た後も施設とつながりながら困っているという状況に立ち会える場を設けていくことが大切なのかなと思いました。

その他としてあげられたのは次の人たちです。

  • 学校の先生
  • 医師、看護師
  • 義父母
  • 後見人
  • 市役所の職員
  • 近所の人

まとめ

それでは今回の記事のまとめです!

  • ケアリーバー(Careleaver)とは、「社会的養護経験者」と言われることが多い
  • 令和3年3月、日本で初めて社会的養護を巣立った子たちの全国調査結果が公開された
  • 最終学歴は(現在、通学している人を除く)、中卒者が15.4%、全日制高校卒業者が54.5%、定時制・通信制高校卒業者が9.5%、専門学校・短期大学卒業者が10.6%、4年制大学卒業者が2.0%
  • 働いている人の雇用形態は正社員が51.8%、非正規雇用が44.4%
  • 2019年度退所者の進路をみてみると、通学しながら就労している人は12.9%、進学だけに専念できている人は21.4%
  • 直近1年間における巣立った施設等との連絡頻度のうちもっとも多い割合が2〜3ヶ月に一回(27.2%・811名)、続いて一ヶ月に一回以上(20.7%)、半年に一回以上(18.8%)
  • 週一回以上のやりとりが多いのは、里親家庭(27.9%)とファミリーホーム(27%)
  • やりとりの頻度として2~3ヶ月に一回以上が「ちょうどよい」と思う人が一番多い
  • 困った時の相談相手は①施設(元)職員が37.1%、②友人が35.2%、施設等で生活したことのある友人が34.2%、交際中の人・配偶者(結婚相手)が25.1%

いかがでしたでしょうか?

今回このように、全国のケアリーバーに対する調査がされたことは非常に良いことだと思います。

一方で、アンケートに回答できるような人は、ケアリーパーの中でも比較的順調な社会生活を営んでおり、「施設とつながりがある」や「生活がわりかし安定している」という模範的な回答が多くなったのではないかという可能性も捨て切れないですね…

しかし、今回の調査結果では今ままで見られなかったようなポジティブな結果も多く、因果関係までは断言できませんが、国の政策や民間の支援の取り組みなどにより社会的養護全体が良い方向に改善しているのではないかとの印象も感じました。

このような調査をしてくださったすべての人に感謝して、これからもたすけあいでは社会的養護を巣立つ子たちを応援していけたらなと思います。

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