みなさんは一時期、アニメの登場人物の名を借りて、児童養護施設へ「ランドセルの寄付」が多く行われていたことを覚えていますか?
わたしもニュースを見ていて、施設もうれしいんだろうな〜なんて思っていたのですが、施設の職員さんにお話を聞いてみると思いもしない事実を知りました。
それは、ランドセルというのは国から支払われる措置費で賄うことができるため、職員さんとしても寄付でいただランドセルを使わせるよりも、子ども達に好きなランドセルを選ばせてあげたいという事実でした。
こうした理由から、ランドセルをいただいても子どもたちが使うことがなく、倉庫に眠っているなんていう話も聞いたことがあります。
この事実を知ったとき、一概には言えませんが、施設の予算で買えるものを寄付するより、予算で買えない物の寄付をしたほうが嬉しいのではないかと思ったのです。
そこで今回は、寄付をしようと考えてくださっているかたのお役に立つような情報…児童養護施設の予算で買える物の解説や寄付の注意点をまとめていきたいなと思います!
知っていますか?措置費
寄付を考えてくださっているかたに知ってほしいのが「措置費」という予算のことです。
措置費というのは簡単に説明すると、児童養護施設に入所している子達の生活を支えるための経費のことです。
児童福祉法の規定に基づく措置に伴う経費れあり、児童福祉施設(児童入所施設)に入所措置を採った場合又は里親への委託の措置を採った場合に、児童福祉施設及び里親への支弁に要する経費
『児童保護措置費保育所運営費手帳(平成23年度版)』日本児童福祉協会 2011年 p.23
今回は詳しく解説しませんが、子どもが施設で生活することが決まったら、国・県・市町村で決められている負担区分に沿って施設に措置費を支払うことになっています。
経費の種別 | 措置等主体の区分 | 児童等入所先等の区分 | 経費等の負担区分 | ||
市町村 | 都道府県 | 国 | |||
母子生活支援施設及び助産施設の措置費等 | 市及び福祉事務所を管理する町村 | 市町村立施設及び私立施設 | 1/4 | 1/4 | 1/4 |
都道府県立施設 | 1/2 | 1/2 | 1/2 | ||
都道府県、指定都市、中核市 | 都道府県立施設、市町村立施設及び私立施設 | 1/2 | 1/2 | ||
そのほかの施設 |
都道府県、指定都市、児童相談所設置市 | 都道府県立施設、市町村立施設及び私立施設 | 1/2 | 1/2 | |
一時保護所の措置費等 |
都道府県、指定都市、児童相談所設置市 | 児童相談所(一時保護施設) | 1/2 | 1/2 |
出典:厚生労働省「児童福祉法による児童入所施設措置費等国庫負担金について」平成26年5月14日厚生労働省発雇児0524第2号
そしてその措置費というのは、予算として購入できるものと予算として購入することが難しいものとがあります。
施設の予算で買える物
まずは、予算として購入できるものを紹介します。
- 洋服代(被服費)
- 靴代
- 日用品代
- ご飯代(食材・おやつ)
- お小遣い
- 学用品や教材を買うお金
- 給食代
- 日林間学校や修学旅行の費用
- 小1・中1への入学時に必要な学用品を買うお金(ランドセルや制服代・部活動で使う物 等)
一番下の入学時に必要なものを買うお金として、ランドセルはもちろん、制服やスクールバッグを買うことができます。わたしは合わせて部活動で使うadidasのエナメルバッグを買いました。
- 医療費
- メガネ代
- コンタクト代
細かくあげるとキリがないのですが基本的なところだけ記載しました!
先ほど措置費は児童養護施設に入所している子達の生活を支えるための経費と説明しました。
そのため、職員さんの人件費や施設を維持するための経費も「措置費」に含まれています。
- 職員さんの人件費
- 施設の水道光熱費
このように施設で暮らしている子達には洋服を買うお金も、日用品を買うお金も、筆記用具を買うお金も、ランドセルを買うお金も措置費として予算化されていることがわかります。
施設の予算で買えない物
つづいて、施設の予算で買えないものを紹介します。
わたし自身も予算については勉強中なのですが、「予算で買えない物」について児童養護施設の職員さんはこのように言っていました。
娯楽的な内容(ゲーム機、幼児さんの絵本)などや、職員に対しての物に関しては予算化されないことが多いため、あると喜ばれるかもしれません。
たしかに寄付の窓口としてAmazonほしい物リストを作っている施設さんでは、子どもたちの本や職員さんたちが勉強するための本が入っていることがありますね。
また、クリスマスには企業さんからゲーム機とゲームソフトをいただくこともあるので、施設側もほしい物をリクエストしているのかもしれないな〜と思いました。
よって施設の予算で買えない(買うのが難しい)物として、つぎの物が挙げられます。
- ゲーム機・ゲームソフト
- 幼児さんの本
- 職員さんが学びを深めるための本
このように、施設や各ホームで共有するゲームや本は予算として購入することが難しく、職員さんのための物は購入が難しいことがわかります。
また、この記事をご覧になっている人にはぜひ抑えておいてほしいポイントなのですが、一部、施設が自腹で賄っているものもあります。
それは、進学のための塾代(医者・弁護士・司法書士等を志す場合)や施設を退所した子たちへの食糧支援についてです。
施設を退所した子たちへの食糧支援はフードバンクを活用することで解決できますが、塾代のように予算があってもその子の進路によっては足りないこともあるようです。
寄付の種類
施設の予算で買えるものと、施設の予算で買うのが難しいものがわかったところで、児童養護施設への寄付として、どのような方法があるのかを整理していきます。
支援の方法は大きく分けて3つあります!
「物(経済的支援も含む)の支援」「人の支援」「経験の支援」です。
それでは一つ一つみていきます!
物の支援
物の支援は言葉の通り、物を贈る寄付のかたちです。
寄付の例を見てみましょう!
- 子ども達のリクエストした本(@クリスマス)
- 図書カード
- ぬいぐるみ
- 戦隊モノのロボットや変身アイテムなどのおもちゃ
- ゲーム
- DVD
- 学習教材
- 三輪車
人の支援
つづいて、人の支援です。
これは今回のテーマとは離れてしまうかもしれないですが、人の支援というのはボランティアさんが挙げられます。
人の支援は大前提として「継続的である」ということが必要です。単発の人の支援は、子どもたちへの離別体験を再発させ、支援にならない以上に、その子に対してのマイナスファクターになってしまうことが多いためです。
人の支援は学習支援や遊びボランティアが該当します。
ボランティアの種類についてはこちらの記事で紹介しているので気になる方はご覧ください!
施設の子どもたちに何かしてあげたい!〜直接的な支援(ボランティアなど)について〜経験の支援
最後に、経験の支援です。
経験の支援は人の支援に重なるところもありますが、施設の職員さんとしては多様な大人とかかわる経験を増やしていきたいと思ってくださっているようです。
基本的に周りにいる大人はみんな「児童福祉に関する資格を有している者(施設職員、児童相談所職員)」「教育関連の資格を有している者(施設職員、学校教員)」のどちらかです。
そのため、一般家庭で育つ子どもたちと比較して、不足するものが、「多様な大人との出会い」。
直接関わるでもいいし、経験値を持っている人であれば勉強会の開催、職場体験みたいなものを定期的に提供するのも一つかと思います。
このように物を送ったりお金を寄付するだけでなく、じぶんがもっているスキルやつながり、経験を生かした方法で支援することもできるんですね。
- プロ野球観戦 招待チケット
- サッカー観戦 招待チケット
- 海外留学の機会(高校生)
- 商店街での職場体験(中学生)
- 職業体験施設(キッザニア等)への招待
- テーマパークへの招待
- そば打ち体験
寄付をする前のチェックリスト
寄付の種類がわかったところで、寄付をするまでの流れをまとめていきます!
①予算で買える物をチェックしよう
これまで解説してきたように、みなさんが贈ろう!としている物のなかには、施設の予算で買える物があります。
事前に把握しておくことで、児童養護施設や職員さんが本当にほしい物を贈ることができるので、チェックしてみてください!
よく寄付されている物を一覧にするとこのようになります!
施設の予算で買える | 備考 | |
洋服 | ◯ | 中古の洋服は不要だと思う職員さんもいます |
文房具 | ◯ | |
ランドセル | ◯ | 子どもにランドセルを選ぶ機会を作りたいと思っている職員さんもいます |
食品 | ◯ | 賞味期限が近すぎると職員さんが持ち帰っている現状もあります |
本 | △ | 施設によってはたくさんの本がある場所もあります |
ぬいぐるみ | △ | |
おもちゃ | △ | |
布団 | ◯ |
②寄付をする前の3つの注意点
ここからは、寄付をする前の注意点を3つ紹介します!
寄付が届くのは嬉しいけれど、連絡もなしに送られてしまうと、「怪しい」と思ってしまい子どもたちに渡すことを躊躇してしまう職員さんもいるようです。
寄付という行為は「子どもたちを応援している」という意志の手段の一つのはずです。
匿名で寄付をすることは日本では美徳があるかもしれませんが、
いまでこそ児童養護施設は5,6人で暮らす小規模の施設も増えてきましたが、「あの子はもらえて、じぶんはもらえない」という状況をつくらないよう、送る際には配慮するといいかなと思います。
寄付をしたら子どもたちにお礼状を書いてもらいたい・子どもが使っている様子を写真で撮ってほしいなど、送った後の要望をオーダーするかたもいるとのことですが、このことについて児童養護施設の職員さんはこのように言っていました。
あんまり要望が多いと嬉しい気持ちも減ってしまう…
わたしがこれまで見聞きしてきた多くの児童養護施設さんでは、寄付が届いたら職員さんがお礼状を書いてお送りしていることがほとんどです。
お礼状以外にも実績や広報のために必要という場合は施設長とのツーショットや職員さんとの集合写真というかたちでしたら職員さんの負担も少ないのでいいのかなと思います。
③施設に問い合わせをしよう!
これまでの流れを踏まえて、いよいよ問い合わせです!
少し緊張するかもしれませんが、寄付をするのに一番良いのは「施設に直接問い合わせをすること」です。
寄付をしたいんですが、ほしい物ありますか?
と電話をすると、事務の人が施設長や主任職員さんに引き継いで、その場で提案できることもあれば、後日担当の職員さんから電話が来てリクエストを教えてもらえることもあります。
以前、職員さんから「この前、高校生からほしい物ありますか?って電話きて驚いたんだよね〜」という話を聞きました。わたしがいうのも気が引けますが、施設のほしい物を聞いて贈ろうとしたその高校生は、よくわかっているな〜なんて思いました。笑
④もう少し気楽に寄付をする方法
こちらはおまけとして読んでいただきたいのですが、(わたしもそうですが)施設とつながりのない自分が施設に電話をするってちょっと勇気がいりませんか?
PRにはなりますが、たすけあいが運営しているAmazonほしい物リストを活用した寄付サイト「ナカソラ」であれば、施設のほしい物リストが掲載されているので、少額から単発で直接、電話をせずとも寄付をすることができるのでおすすめです!
「何かできることはないか」と真剣に考えている人にとても良い情報をありがとうございます!さっそく本を送らせていただきました!
Amazonならアカウントある人も多いですし、寄付のハードルが低くてとてもいいと思いました!さっそく本を寄付させていただきました。
まとめ
それでは今回の記事のまとめです!
- 児童福祉施設には「措置費」があって、入所している子たちの生活を支えるための経費があります
- 措置費は施設の運営関係・子どもの生活関係・子どもの教育関係・医療費などに使われます
- 児童養護施設の支援は3つあり ①物の支援 ②人の支援 ③経験の支援 があります
- 寄付をする際の注意点は3つあり ①匿名でいきなり送らない ②不公平にならないよう配慮する ③お礼を指定しすぎない があります
- 寄付をする際は施設に直接問い合わせをするのが一番良いです
- 問い合わせをするのが苦手だなという人は「ナカソラ」にアクセスし、各施設さんに作成いただいたAmazonほしい物リストの物を送る方法があります
いかがでしょうか?
寄付というのは非常に尊いアクション。でもそのアクションが一方通行だとお互い気持ち良い気持ちにはなりませんよね。
今回の記事を通して、いま寄付を考えてくださっている人の不安な気持ちが少しでも軽やかになることを願っています。
コメント欄でのご質問も随時お待ちしております!