みなさん、こんにちは!田中れいかです。
今回は「パーマネンシーパクト」について、よくある質問に答えながら、その意義や実践方法について解説していきます。
質問に答えてくださったのはNPO法人IFCAで活動をしている田邉紀華さんです。
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パーマネンシーパクトとは、ユース(若者)が安心して未来を見つめられるように、自分で選んだ信頼できる大人との関係を見える化し、深めていくためのツールです。
特定の手順や厳密なルールに縛られるものではなく、大切なのは、ユースが「この人とつながっていきたい」と思える関係を築くこと。そして、それを一緒に育んでいくことです。
この記事では、約束を結ぶ大人としての心構えや実践的なヒントをお伝えしていきます。
ユースが自立したあとも継続した信頼関係を築くためにどのように寄り添えばよいか迷っている方、ぜひ読んでみてください。
この記事が、ユースとのつながりについて考えるきっかけとなれば幸いです!
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パクトを結ぶ大人になるには?
- パクトを交わす大人を担うにあたって研修はありますか?
- 基本的にパーマネンシーパクトには研修がありません。
その理由は、若者が自分で選んだ大人が、その子のことをよく知っている、という前提があるからです。この「よく知っている」ということには、大きく2つの重要な点があります。
一つ目は生い立ちを理解していること、二つ目は気持ちを理解していることです。
その子がどんな環境で育ってきたのか、これまでどんな経験をしてきたのかを知っていること。加えて、その子がどんな時に気分が落ち込んだり、不安になったりするのかを知っていることが重要です。
研修をして知識を身につけるというよりは、その子のことをどれだけ考えているかということに重きを置いています。
パーマネンシーパクトは、若者が安心して自分の未来に目を向けられるように、「信頼」と「つながり」を大事にすることが求められています。
- パクトを交わす大人の身分保証や管理は行っていますか?
- 現在のところ、身分保証や特別な管理は行っていません。
パーマネンシーパクトは、基本的にファシリテーター(調整役)がユースと大人の間に立ち、連絡先や相手の基本情報を把握していることを前提としています。たとえば、大人の職業や年齢、住んでいる地域など、最低限の情報はファシリテーターが確認する形になります。
ファシリテーターと約束を結ぶ大人(ユースが選ぶ大人)が知り合いの場合もあれば、そうでない場合もあります。
特に、ユースが施設や社会的養護の関係者以外の人を選ぶ場合、ファシリテーターとその大人が初対面になることもあります。その場合は、まずはお互いのことを知る時間を持つことから始めることが想定されます。
パーマネンシーパクトは約束を結ぶ大人に対して「厳密な審査」をするものではなく、あくまでも「ユースが選んだ大人」ということを大切にしています。次の質問にも通じますが、ファシリテーターと大人が、基本的な情報を共有しながら、「人と人」として関係を深めていくことが大切です。
また、ユースと選ばれた大人がどのようなつながりで出会ったのか、その背景もファシリテーターにとっては押さえておきたい情報の一つになります。
パクトを結ぶタイミングは?
- 大人からパクトを結ぶことを提案することもありますか?
- 基本的には、パーマネンシーパクトは“若者(ユース)から始まるツール”です。
たとえば、全く知らない大人から「こういうことやらない?」と持ちかけられることはありません。それだと少し怖いですからね(笑)。
ただ、日本ではまだこのパーマネンシーパクトというツール自体があまり知られていないという背景があります。そのため、この仕組みを知らないユースに対して「こんなツールがあるけど、興味があったらやってみない?」と提案することはあるかもしれません。
現在のところ、この取り組みは主に社会的養護を必要とする子どもやユースを対象としていますが、本来は特定の制限があるものではありません。誰にでも必要になる可能性があるツールだと考えています。
パーマネンシーパクトは、ユースが誰かを頼ることや、お願いする経験をするための一つの方法です。こうした取り組みが必要な人に届けばいいなと感じています。
- 施設等の入所中にパクトを結ぶこともありますか?
- 施設に入所中でも、ユースの理解が得られれば結ぶことは可能です。
ただ、基本的にパーマネンシーパクトは自立を前提として作られた「つながり」と「助けてほしいこと」をを見える化するツールです。
そのため、多くの場合は自立する前、施設を巣立つタイミングで結ばれることが多いです。
パクトの変更など結んだあとについて
- パーマネンシーという言葉にハードルの高さを感じます。どんな心持ちでいたらいいでしょうか?
- 難しくなってしまったときは、その背景を正直に伝えることで、関係を続けていくことができます。
たしかに「パーマネンシーパクト」の「パクト」を直訳すると「契約」という言葉になりますが、このツールの本質は「人と人との関係性を見える化すること」です。一方的なものではなく、お互いが無理のない範囲で関わりを深めていく、相互的なやり取りが前提なんですね。
たとえば、大人側の状況が変わってしまった場合。
体調を崩してしまったり、予定が合わなくなったりして、ユースの期待に応えるのが難しいと感じたときには、まずその事情を素直に伝えることが大切です。
「こういう状況で、今までの形では少し難しくなってしまいました」と共有した上で、代わりの方法を提案することもできます。たとえば、直接会うのが難しいならZoomや電話を使ったやり取りに切り替える、連絡頻度を減らすなどの選択肢もあります。
大事なのは、「急に応えられない」とするのではなく、背景をきちんと説明して、相手と一緒に新しい形を考えることです。パーマネンシーパクトは柔軟なツールですから、人と人との関係をその時々の状況に合わせて作っていくことができます。
- パクトを結んだあとの見直しとして、ユース・約束を結ぶ大人・ファシリテーターの3者で行う「パーマネンシーパクトミーティング」があるという認識で合っていますか?
- 正式に「パーマネンシーパクトミーティング」を定期的に行うという形はありません。
ただし、約束の内容を変更したり、新しい約束を追加したり、一時的に中断したりする場合には、ユース・大人・ファシリテーターの3者で集まり、すり合わせを行うことがあります。
また、約束の進行状況や関係の変化を確認するために、定期的に振り返りの時間を持つことも必要です。ただし、基本的にはユースと約束を結んだ大人の二者間の関わりが中心になります。
ファシリテーターが出てくるタイミングは、主に見直しや調整が必要な場合が想定されます。
ただし、ファシリテーターがユースや約束を結んだ大人とどちらかの知り合いであることが多く、そのつながりを活かして「そういえば、あの件どう?」と軽く確認し合うような関係性をイメージしています。
一方で、大人とファシリテーターがもともと知り合いでない場合など、関係性が薄い場合は、定期的な確認やタイミングを設けることで、大人側が抱える悩みや状況の変化に気づきやすくなるのではないかと感じています。
人と人とのつながりを柔軟にサポートする仕組みとして、状況に応じた対応を検討していくことが大切です。
パクトを結ぶ大人としての心構え
ここからは、ユースとパクトを結んで2年目という田邊紀華さんから聞いた心構えを紹介します!
①日常的な関わりを大切にする
2年間ほどパクトを続けていますが、私が意識しているのは、日常的に電話や会話の機会を持つことです。その中で、自分の価値観を押し付けず、「それはダメだよ」といった否定的な言葉を避けるようにしています。
まず相手の話を聴くことを大切にし、不安なことがあっても相手を信じて待つ姿勢を心がけています。困っているときには求められた範囲でアドバイスをするようにしていますが、基本は「聴く」が中心です。
②支援者ではなく、フラットな関係性を築く
大人は知識を活かして多くを語りたくなることがありますが、それが逆にユースにとっては負担になることも。
私も失敗して「言わなくてよかったかも」と思うことがありますが、ユースが「それくらい分かってる」と軽く流してくれることで関係性が保たれています。
ただ、時には私自身の話をすることもあります。その際、ユースが私を気遣って怒ってくれたりすることがあり、その優しさにほっこりする瞬間もあります。
このように、支援者・被支援者という構図ではなく、お互いを人として尊重し合うフラットな関係性を築くことが、パーマネンシーパクトの本質だと感じます。
③「見える化」することで関係を深める
パーマネンシーパクトは、これまでの関係性を形式的に「見える化」したものと言えます。
契約や約束という言葉には重さを感じるかもしれませんが、実際にはこれまでの関わりを自然に続けていくためのツールです。
その中で、つながりが明確になることで、関係性がより深まったり、お互いをさらに理解するきっかけになったりすることもあります。
④人と人とのつながりを続けていく証
パーマネンシーパクトは、長く人と関わりを続けていくための「証」のようなものだと思っています。
それは特別なスキルや知識が求められるものではなく、すでに築いてきた関係を大切にしていくことが重要です。
その意味で、パーマネンシーパクトは福祉の枠を超えた、人と人とが対等に向き合うツールなのだと実感しています。
もっと知りたい方へ
今回のQ&Aでも十分理解が深まる内容でしたが、「もっと詳しく知りたい」「自分も関わりたい」という方は「パーマネンシーパクトについて詳しく解説した冊子」をご覧ください。
内容はわかりやすく、約束を結ぶ大人にぜひ手に取っていただきたい一冊です。
IFCAのホームページから無料で閲覧可能です。スマホやパソコンから手軽にアクセスできます。
紙の冊子が必要な場合は、1冊500円で注文できます。同じくIFCAのホームページから簡単にお申し込みいただけます。
いかがでしたでしょうか?
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