みなさん、こんにちは!田中れいかです。
更新の間隔が開いてしまいごめんなさい!
以前より告知させていただいていた、田中れいか初の書籍『児童養護施設という私のおうち』が12月6日に出版され、それにともなうドタバタで、なかなか記事を更新することできていませんでした…
さて今回は、そんなわたしの初めての書籍『児童養護施設という私のおうち』について、今更ながら、なぜ出版するに至ったのか、またどのような思いで執筆したのかについて紹介していきたいと思います!
「今更遅いよ!」とは言わずに、この投稿を読んで少しでも本にご興味を持っていただけたなら幸いです。
出版に至った経緯
最近はYoutubeやTikTokで人気が出て、本を出す人がたくさんいますよね。
たすけあいchは登録者数が3,300人なので、決して人気チャネルとは言えないのですが、たまたま編集者さんがこのチャンネルを見つけてくれて声をかけてくださったのがきっかけです。
連絡をいただいたときは「チャンスだ!」と思いましたし、20歳のときから叶えたいことリストに入れていたのですぐに「お願いします」とお返事し、本づくりがスタートしました。
執筆中の思い
最終的に1年半かけて、この本ができあがりました。
最初はわたしの生い立ちのインタビューということで、ライターさんと編集者さんとわたしの3人でオンラインとリアルと合計で4回に分けてお話をしたのですが「これは本当に本になるんだろうか?」という不安は正直ありました。
初めての出版だったので書籍づくりの流れもわからないし、完成までの所要時間もわからない…なので1年くらい、本になる実感のないまま前に進んでいた感覚でした。
発売前の1ヶ月前…
印刷前のゲラチェックをして初めて「本になる」という実感が湧いてきました。笑
執筆中の思いとしては、冷静さと客観性をもたせるよう意識しました。
家族のことや家族への想いを言葉にすることで、感情が溢れてきて泣いたこともあったのですが、その泣けてくる気持ちをも冷静に分析して、それを言葉にできるよう心と頭と全部つかって文章にしました。
また、読んでいるみなさんに、わたしが体験した当時の情景や感情が伝わるような言葉を意識的に取り入れました。
久しぶりに食べる「誰かの手作りご飯」は言葉にできないくらい美味しくて、温もりを感じました。そして、それまで気負っていた「大人でいなきゃいけない」気持ちがそのときだけはスーッとなくなって、久しぶりに自然体でいられました。
lecture9 退所後の一人暮らし
帰りたいけど、帰れない p.121
本の内容について
ということで、ここからは本の内容について紹介します!
これについては繰り返しになりますが、児童養護施設というと「孤児のいる施設」「虐待により傷ついた子がいるイメージ」「施設で暮らすことになってかわいそう」といった声をまだまだ聞くことがあります。
はたして、児童養護施設で暮らしている子どもたちは「かわいそうな存在」なのでしょうか?
確かに入所してくる背景は「かわいそう」かもしれません。
でも、施設に入ることで衣食住が保障され、お小遣いで好きな物を買ったり、習い事ができたり、制限もあるにはあるけど…そこは子どもたちにとってのおうちなんです。
その思いを踏まえつつ、これまでたすけあいchでお伝えしてきた「施設の暮らしの1日の流れ」「親子の交流の有無」「子どもの入所期間」「退所後の進路」「ケアリーバー全国調査」などなど、解説してきたデータも取り入れ、児童養護施設を知ってもらうための最初の一冊になるよう仕上げました。
児童養護施設の暮らし【10年間暮らした施設出身モデルが解説】 児童養護施設に立ちはだかる大学進学の壁【10年間暮らした施設出身モデルが解説】 【日本初】ケアリーバー(社会的養護経験者)全国調査が実施されました!書籍はchapterとlectureの2つの構成になっています。
生い立ちはChapterで紹介
まずはChapterです。
このパートではわたしが施設に入る前の話と現在の活動につながるまでのお話を、全部で13章にわけて紹介しています。
- 児童養護施設に入ったわけ
- 集団生活がスタート
- 児童養護施設の特徴
- 思春期と集団生活
- 私と家族
- JKデビューと暮らしの変化
- 大学受験と自立
- 児童養護施設から巣立つ
- 退所後の一人暮らし
- 「児童養護施設出身」でも夢は叶う!
- 「スピーカー」というお仕事
- 知ることのハードルを下げたい
- いろんな支援がある未来がいい!
Chapterではわたし自身の思い出の写真を使うことで、児童養護施設のことを知らない人でもイメージしやすくなるよう工夫しました。
基本情報はlectureで解説
つづいてlectureです。
ここでは児童養護施設に関する現状や課題をデータや職員さんの声を取り入れながら解説しています。
- 大学生に聞いた「児童養護施設」のイメージ
- 児童養護施設ってどんなところ?
- 子どもを支援するしくみ
- 「おうち」としての施設をスケッチする
- 施設の生活をみてみよう!
- 施設にいる子どもと家族の関係
- 施設の子どもの「学ぶ権利」
- 子どもたちの経済的負担
- 退所後の子どもたち
- 「せたがや若者フェアスタート事業」とは?
- 児童養護施設に行ってみよう!
- チャボナビ協力!「児童養護施設で働く」方法
そして、この書籍では7歳〜18歳までを過ごした施設の名称を公開しているのですが、わたしが生活していた施設のある東京都世田谷区の保坂区長にもスペシャルインタビューとしてお話を伺い、掲載させていただいています。
もくじはこちらです!
書籍のみどころ
この一冊なんですが、このチャンネルのコンセプトと同じで、児童養護施設を知ってもらうためのハードルを下げたい!という思いから内容を考え執筆をしました。
ポイントはわたし以外の人の声を盛り込んだところです。
このチャンネルもそうですが、わたし自身さまざまな社会的養護に関する書籍を読んで学び、発信をしているんですが、だいたい3種類の本が存在しています。
- 当事者の経験が書かれた本
- 施設の職員さんが書いた本
- 大学の先生など専門家の書いた本
どれも気づきがあって意義のある本ばかりなのですが、「児童養護施設を知るための入り口」としては少しハードルが高いかな…と思っていました。
なので、わたしの経験だけでなく、以下にあげたような児童養護施設にかかわりのある人の声を少しずつ入れさせてもらいました。
- 施設で暮らしていることを知った同級生の声
- 施設職員さんの声
- 世田谷区の職員さんの声
- (元)中学校の先生の声
- 当事者活動をしていた子の声
他にもボランティアさんとの関わりや大学生との関わり、友だちのお母さんがとってくれていたスタンスについても触れているので、見ている方に何かしら重なる人物が登場しているんじゃないかなと思います。
繰り返しにはなりますが、「社会的養護の入門書」というコンセプトでつくったので、正直載せきれなかったこともあるにはあります…
でも、児童養護施設について知りたい!と思ったときにきっと役に立つ、そんな一冊に仕上げました!
児童養護施設で暮らしていた人と接点のない人やこれから施設で働こうと思っている人、児童養護施設を知りたい!という人はぜひぜひ手にとってもらえたらと思います!
初公開の内容
書籍を出してから「初公開の内容はあるんですか?」という質問があったのですが、初出しの内容は2つあります!
②当事者活動について
わたしの家族について
一つ目はわたしの家族についてです。
家族のことはIFCAさんのストラテジック・シェアリングという考え方でいうと、相手ありきのことなので、じぶんがやたらと発信できない部分でもあります。
だからSNSでも詳細に発信したことはなかったのですが、今回はお姉ちゃんを中心に「伝えていいこと」「ダメなこと」を確認させてもらい、本に掲載させてもらいました。
そしてこれまで、インタビューを受けるなかでも「お父さんを悪く描かないでほしい」とライターさんや記者さんに伝えてきたのですが、今回は本ということもあり、納得いくかたちでお父さんについても表現できたかなと思います。
田中家5人分で12ページの尺なので、あっという間に読み終わると思いますが、田中家について気になるかたは本を読んでいただけたらと思います。
当事者活動について
なかでも執筆中の最後に「これもいれたい!」と伝えたのは当事者活動についてです。
当事者活動というのは社会的養護に限らずLGBTQ、シングルマザー、シングルファザーなどなど、広く存在する立場です。
わたしはなかでも児童養護施設出身者として活動をしていますが、もちろん葛藤はあれこれありました。
他の人が発信している虐待経験の重さをじぶんの経験と比べてしまったり、メディアにたくさん出ている子をうらやましく思ったり…
そういう葛藤があるなかで活動してきて、この本を読む人のことを考えたとき「わたしと同じような立場の人も読むよな〜」と思い、敢えて入れさせてもらいました。
やはりここでも、わたし個人の思いだけではなく、他の子の声もいれたいな〜と思ったので、同じようにスピーカーとして活動していた子にインタビューをお願いして掲載しています。
その子はインタビューのなかで「当事者活動をやめることが自立」という考えを教えてくれたんですが、なんかわたし自身、それを聞いてスカッとしたんですよね。笑
周りの子をみてみても、いろんな当事者の使い方、当事者活動のその後があると思いますが、わたし個人としてはこれからもたくさんの人の話を聞いて社会的養護のことを発信していけたらと思います。
書籍の感想
ここで一部にはなりますが、書籍を読んだ人の感想をシェアしたいと思います!
わたしが抜粋したので、偏りがありますことをご了承ください。
児童養護施設に住むまでの経緯、児童養護施設での暮らし、退所してからの暮らし、少しイメージが変わった気がします。
読んでいるうちにれいかさんが自分の友達のように感じてきました笑
途中何度も涙が出てきそうになりながら、図書館とカフェだったのでぐっと堪えて読みました。
読みやすい言葉で書いてあるので、2時間半くらいで読めました!
10代保育士を目指す女性
この本は、田中麗華さん自身の過去から現在そして未来について、等身大に描かれた著作だ。田中さん自身で紡いだ言葉でありかつ、この本が届いて欲しい読者のことへの心配りに溢れた思いやりで満たされている。
田中さんがこの本で伝えたいことは一言で表しきれない。本の至るところに散りばめられている。この本の読者はいかに田中さんの思いを掬い取れるかが試されているようにも思える。それでも、この本の優しい文体・表現・構成からはそれを感じさせず、堅くならない形で施設について考えられる。
この本で描かれた田中さんのライフヒストリーを通じて、「児童養護施設」一般のイメージから深掘りする形で、そこに住む1人1人の子どもたち若者たちの姿を想像する一助となる。
またこの本は、児童養護施設で育っている子ども・若者、そしてそこから巣立った大人たちにとって、自分自身の生い立ちを振り返ることに役立つ可能性を秘めている。こうした取り組みは、児童福祉研究におけるライフ・ストーリー・ワーク(LSW)研究とも位置付けられるだろう。
この本の意義は、児童養護施設を知らない読者をはじめとして、児童養護施設で育ち・巣立った子ども若者大人たち、また児童福祉をはじめとした福祉業界に関わる人達など幅広い人たちにとって、有意義なものとなる。
また同時期に出版されたブローハン聡さんの『虐待の子だった僕ー実父義父と母の消えない記憶』(2021年、さくら舎)と合わせて読むと、より一層社会的養護と呼ばれる領域への理解が深まるように思う。
70代男性
田中さんの本は、児童養護施設の生活、自立、お金、そして社会的養護についてきちんと書いてあることが素晴らしいと思います。
わたしも施設職員を43年してきましたが、ご本人がこれほど見事に書かれた本は他にありません。
また、わたしが関わる高校生で、児童養護施設を利用する人もいますので、学校にこの本を置いて読んでほしいと思います!
70代男性
お知らせ|4話 無料公開中!
ここで、みなさんにお知らせです!
この本を書いた本人としては、みなさんに「本を買ってもらうことが嬉しい」っていうのはもちろんあるんですが、本を買ってもらうことよりも「児童養護施設を知ってもらう」ことのほうが嬉しいんですよね。
なので本を買わなくても、書籍の一部を無料で読むことができる場所を準備しました。
全部で4話分のURLを添付してますので、ぜひ試し読みしてみてください。
参考 【入所経緯編】午前0時過ぎ、7歳の私は姉と家を出たオルタナ 参考 【中学生編】思春期と集団生活オルタナ 参考 【高校生編】職員たちとの関係オルタナ 参考 【退所後編】帰りたいけど帰れない〜退所後の苦悩〜オルタナこの本、1760円するんですけど、ちょっと高いですよね…
値段までは決められなかったんですが、「ちょっと高いよ〜」というかたもぜひ、試し読みだけでもご覧ください。
ご購入のかたはAmazonからどうぞ!
最後に…
ということで今回は12月6日に発売した「児童養護施設という私のおうち」について紹介させていただきました。
こんなわたしでも一冊の本をつくれるんだってちょっと自信がつきましたし、これからも「本」という形で乳児院、自立援助ホーム、母子生活支援施設などなど社会的養護を知るきっかけをつくれるかもしれない!と勝手にワクワクしています。
今回は人生で初めて「本を出す」という経験をさせていただき、旬報社さん、そして担当の編集者さんには大変感謝しております。
これはご縁次第ではありますが2冊目、3冊目と本を出版し社会的養護を知るきっかけをつくれるよう、たすけあいの活動をつづけていけたらと思いますので、これからもみなさんと一緒に学んでいけたら嬉しいです!
4コマ漫画で紹介!『児童養護施設という私のおうち』アナザーストーリー
はじめまして
今、図書館でその本を読んでいます。
自分も短い期間ではありましたが東京の児童養護施設にいました、小学校の中学年だったのでもう50年以上前ですね…
その頃なので社会的にもシステムや建物も今とはまるで違います。
自分は姉と一緒に居て本の中に書いてある「稀に元の学校に戻った」子供でした。
今とは全然違うけれど、入所していた子どもとお世話してくれた人たちの気持ちは変わらないなぁ…と思いました。
これからのご活躍をお祈りすると共に陰ながら応援しています。
本松さま
図書館で書籍を読んでいただき、早速コメントまでくださりありがとうございます。
田中れいかです。
本松さまは「元の学校に戻った」ご経験があるんですね。
東京都では児童相談所が23区独自に設置できるようになり、そのおかげでもとの学校に通える子もこれから増えると思いますが、まだまだぶつぎりの福祉があるのも現状です。
今後もたくさんの人に学ばせていただきながら発信をつづけられたらと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。