昨年(2022年)の8月24日、日差しの暑い日。
一般社団法人子どもの声からはじめよう 代表理事でこども家庭庁の参与を務めている川瀬信一さんのご縁で、加藤勝信厚生労働大臣、長島昭久議員、自見はなこ議員、山田太郎議員、鈴木貴子議員とお話する機会をいただきました。
この取り組みは、川瀬信一さんが中心となって実行された当事者の声を政治家に届けるという企画です。
私自身は、予定の都合などもあり、第2回の話合いの機会に出席させていただくことになりました。
ちなみに、こちらの取り組みは第3回まで実施されており、SNSで20代前半の社会的養護経験者が集まっている様子が発信されています。
普通に生活をしていたら、社会的養護経験者が政治家と面会する機会はほとんどありません。両者を繋ぐ存在がいるからこその実現です。
また面会の際に、私から発言させていただいた、出自を知る権利に密接に関わる児童記録票の保存期間の延長について、面会後に厚生労働省の検討事項に盛り込んでいただけるなど、個人的にもとても貴重な経験をさせていただきました。
もちろん、私の発言がきっかけになったわけではありませんが、当事者の意見を丁寧に対応したという事実には変わりはなく、とても感謝をしています。
そこで、今回は約1年前の出来事ではありますが、少し当日の様子をご紹介させていただきたいと思います!
(報告者 / 田中れいか)
8月24日活動報告
9:40|衆議院第一議員会館集合
突然ですが、みなさんは衆議院議員会館に足を運んだことはありますか?
私はこの時で3回目でしたが、何度行ってもソワソワしてしまう場所の一つです。セキュリティは厳しいし、若い人は少ないし。慣れる日が訪れるとは到底思えません…
そうして迎えた当日。
この日は話す内容に自信がなく、徹夜して議員会館に向かってしまいました。というのも、「政治家に伝えたいこと」という課題を与えられましたが、行政ではなく政治家へと問われても、具体的に「何を伝えたらいいのか」「どんな話を求めているのか」、どんな内容を話すことが適切なのかわからなかったからです。
その結果、移動時間も原稿の見直しに時間を費やし、議員会館に着いてから原稿が完成。
議員会館にあるコンビニで急いで印刷をして、会議室へ向かいました。
10:00|対話スタート
まず最初に川瀬信一さんから企画の趣旨説明があり、風間暁さん、私の順番で話題提供をすることになりました。
風間暁さんからは薬物依存に関する現状と課題のシェアがありました。
現在、若い人が手を出してしまいやすい安価なドラッグがあることの共有や、依存してしまった人たちのために必要な居場所についてお話がありました。研究資料やデータの資料を配布してくださり、わかりやすい問題提起でした。
ちなみに風間暁さんは「こども庁」への名称変更を求める関連団体・専門家ネットワーク(仮称)の発起人として活動し始め、それから政治家への発信がスタートしたと教えてくれました。
私からは迷いに迷った結果、出自を知る権利について問題提起をさせていただきました。
結論からお伝えすると、満25歳となっている児童記録票の開示請求について、年齢延長のお願いをしました。(こちらの現状と課題については記事で取り上げたいと思います。)
それを受けて、2人の話題提供について一言ずつ出席している議員さんから発言がありました。
これはあくまで私個人の感覚値にはなりますが、社会的養護については十分知識のある方が出席をされているからか、課題感についての反応が薄いように感じました。
議員さんも知らない新しい課題を常に探している。そんな雰囲気を感じ取り、話が終わったあと、もう少し政治家の皆様が求めている問題提起ができたのではないかと虚無感を覚えました。
活動を終えて
これまでたすけあいが行ってきた活動は政治家に発信しているものではなく、どちらかというと市民のみなさんへ意識変容を促すために発信することを大切にしていました。
よって「国会議員」と聞いて、一緒に話しをするための共通言語が分からない印象が強く、戸惑いのなか原稿を準備しました。
「この話がどう役立つのかわからない」
「言っても無駄なんじゃないか」
そんな思いが話し終えたあとも残り続けましたが、その不安は時間差で喜びに変わりました。
虐待などの理由で施設や里親の元で育った子どもの記録を児童相談所がまとめた「児童記録票」について、厚生労働省が、現在の指針で「原則25歳まで」としている保存期間の延長を検討している。成長してから生い立ちを知りたいと考えるケースは少なくなく、一部の自治体では独自に長期保存したり、永年保存したりしている。延長することで、子どもの「知る権利」を守る狙いがある。
児童相談所の記録 保存期間の延長を検討、自身の生い立ちを知るために 厚労省
現状「原則25歳まで」
このニュースを目にした時に、自然と「加藤大臣が対応してくれたんだ」と思いました。というのも、あの日の別れ際に「動いてみるね」と優しく声をかけてくれたからです。
行政はもちろん、政治家のみなさんも確約というのはしないのですが、前向きに動くことをその日その場で約束してくれました。それを半信半疑ですが覚えていたからこそ「加藤大臣がやってくれたんだ」と強く思ったのです。
まだ「検討」の段階ではありますが、実はこの児童記録票の年齢制限については心理職を始め社会的養護関係者が長らく課題視していたことです。それがこうして前向きに変化しつつあることを大変うれしく思います。
「言っても無駄だ」と思う考え方の癖はなかなか消えませんが、個人としても団体としても、発信しつづけることをやめないでいきたいと強く思う機会になりました。
(報告者 / 田中れいか)